代理店契約で再販売価格を拘束することは違法になるのか?解説します。

契約書

こんにちは「あなたの法務部」法務部長中川です。

今日は、代理店契約でよくある質問について解説します。

代理店契約書を作るときに、よく受ける質問に

「代理店が販売する価格を拘束したいけれど、違法にならないのか」

というものがあります。

結論を言ってしまうと、メーカーが代理店に対して、再販売課価格を拘束するのは独占禁止法違反になります。

では、メーカーとしてはどのようにすればいいのでしょうか。

そこを解説します。

独占禁止法とは

独占禁止法とは、正式名称を「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」といいます。

独占禁止法は、公正かつ自由な競争を促進することで、一般消費者の利益を確保することとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進することを目的として制定された法律です。

そのため、次のような取引を禁止しています。

  1. 私的独占
  2. 不当な取引制限
  3. 不公正な取引方法

これにより、事業支配力の過度の集中の防止し、結合、協定等の方法による生産、販売、価格、技術等の不当な制限やその他一切の事業活動の不当な拘束を排除することを定めているものです。

独占禁止法は、一般消費者の利益の保護のためにある法律なのです。

独占禁止法と再販売価格

再販売価格とは、メーカー等商品の供給者が、その商品の取引先である事業者に対して、その次の取引先やエンドユーザーに販売する価格を指示して、遵守させることをいいます。

次の取引先やエンドユーザーに販売する価格を再販価格といいます。

ですので、再販価格を決めて取引することを再販価格の拘束、あるいは再販売価格維持拘束と言ったりします。

再販売価格拘束は、独占禁止法に違反します。

独占禁止法から確認してみましょう。

まず、独占禁止法の19条では「事業者は、不公正な取引方法を用いてはならない」としています。

では、どのような取引が不公正な取引に該当するのでしょうか。

独占禁止法2条9項では、6つの取引について、不公正な取引と定めています。

その1つに次のような取引があります。

自己の供給する商品を購入する相手方に、正当な理由がないのに、次のいずれかに掲げる拘束の条件を付けて、当該商品を供給すること

  1. 相手方に対して、その販売する当該商品の販売価格を定めてこれを維持させること
  2. 相手方の当該商品の販売価格の自由な決定を拘束すること
  3. 相手方の販売する当該商品を購入する事業者の当該商品の販売価格を定めて相手方をして、当該事業者にこれを維持させること
  4. 相手方をして、当該事業者の当該商品の販売価格の自由な決定を拘束させること

再販売価格維持拘束をしたまま取引をすると独占禁止法違反になります。

たとえば、メーカーが代理店に対し、代理店が取引先やエンドユーザーに対して販売する価格を拘束して販売するような契約をすると独占禁止法に違反します。

また、メーカーが流通業者にメーカーが示した価格で販売することを拘束しているような場合も独占禁止法に違反するのです。

参考条文

私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律

第一条 この法律は、私的独占、不当な取引制限及び不公正な取引方法を禁止し、事業支配力の過度の集中を防止して、結合、協定等の方法による生産、販売、価格、技術等の不当な制限その他一切の事業活動の不当な拘束を排除することにより、公正且つ自由な競争を促進し、事業者の創意を発揮させ、事業活動を盛んにし、雇傭及び国民実所得の水準を高め、以て、一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進することを目的とする。

第二条 (略)

9 この法律において「不公正な取引方法」とは、次の各号のいずれかに該当する行為をいう。(略)

四 自己の供給する商品を購入する相手方に、正当な理由がないのに、次のいずれかに掲げる拘束の条件を付けて、当該商品を供給すること。

イ 相手方に対しその販売する当該商品の販売価格を定めてこれを維持させることその他相手方の当該商品の販売価格の自由な決定を拘束すること。

ロ 相手方の販売する当該商品を購入する事業者の当該商品の販売価格を定めて相手方をして当該事業者にこれを維持させることその他相手方をして当該事業者の当該商品の販売価格の自由な決定を拘束させること。

(略)

第十九条 事業者は、不公正な取引方法を用いてはならない。

私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律

再販売価格維持拘束が違法にならない場合

再販売価格維持拘束は、すべて独占禁止法違反になるのでしょうか。

実はそうではありません。

次の場合には、再販売価格維持拘束は、違法になりません。

  1. 法律の適用除外を受けている場合
  2. 正当な理由がある場合

適用除外制度

独占禁止法では、法律の適用除外を設けており、中でも有名なのが、著作物の再販価格の維持については、適用除外となっています。

これを出版物の再販制度といいます。

再販適用除外制度は、

  • 書籍
  • 雑誌
  • 新聞
  • レコード盤
  • 音楽用テープ
  • 音楽用CD

の6つについて、適用除外としており、これらの商品については、定価販売が認められています。

ですので、書籍や新聞、音楽用CD等は、定価販売がされているのですね。

正当な理由がある場合

独占禁止法では、正当な理由がないのに再販売価格を拘束することは、不公正な取引に該当し、違法となると定めています。

ということは、正当な理由が存在するのであれば、再販売価格を拘束することは違法ではないともいえます。

では、どのような行為であれば正当な理由となるのでしょうか。

独占禁止法は、公正かつ自由な競争を促進することで、一般消費者の利益を確保することを目的としています。

ですので、再販売価格を拘束することが、実は、自由な競争が促進されて、新商品の販売の促進、新規参入の促進、品質やサービスの向上などの効果がもたらされる場合、競争を促進する効果を生じているといえ、違法とならないケースも出てきます。

ですので、正当な理由がある場合とは、次のような条件に合致した場合は、認められることとなります。

  1. 再販売価格の拘束によって実際に競争促進効果が生じること
  2. それによりブランド間競争が促進されること
  3. これら競争促進効果が生じることによって商品の需要が増大すること
  4. これらの効果により消費者の利益の増進が図られること
  5. 再販売価格の拘束による上記の効果が再販売価格の拘束以外のより競争阻害的でない他の方法によっては生じ得ないものであること

これらすべてに合致していて、かつ必要な範囲、及び必要な期間に限り認められることとなっています。

再販売価格の拘束が、上記のような条件に合致し、自由な競争が促進されるのであれば、再販売価格の拘束には「正当な理由がある」といえ、ただちに独占禁止法に違反しない形となります。

代理店契約書の作成において

メーカーは、ブランドの維持や価格維持、値崩れを防ぐ目的から、代理店やエンドユーザーに販売する価格を拘束したい気持ちが常にあります。

ただし、上記に見てきましたように再販売価格を拘束することは、独占禁止法に違反します。

ですので、メーカーサイドとしては、どのような状況が違法になるのかをきちんと理解し、その上で、どのような対策を取ることが、ブランドイメージの構築に繋がるのか、流通業者との間での正当な取引関係を結ぶことができるのかの戦略が必要になってきます。

代理店契約書を作る上でも、きちんと戦略を立てた上で、違法にならない形のものを用意するのが望ましいところです。

もちろん、何が違法になり何が適法になるのかは、具体的な状況や具体的な方法によって異なってきますので、一般的な法律を知った上で、個別具体的な状況が適切なのかどうかを判断する必要があります。

もし、お困りであればいつでもご相談ください。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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