こんにちは「あなたの法務部」中川部長です。
今日は、印紙の話です。
契約書には、印紙を貼る場合があるのですが、とてもよく受ける質問に
「この契約書は、2号文書(請負契約書)にも7号文書(継続的な基本取引契約書)のどちらにも該当しそうな感じですが、どちらと判断して印紙を貼ればいいのでしょうか?」
というものがあります。

印紙税を納付しなければ過怠金が徴収されますので、ビジネスシーンで利用する契約書に印紙を貼るべきか、いくらの印紙を貼るべきかという問題は、とても重要な問題です。
でも、契約書が印紙税法でいうところの「何号の文書」に該当するのかを判断するのは、とても難しい問題です。
特に請負契約である2号文書と継続的来な基本取引契約である7号文書は、どちらにも該当する契約書はよくあります。
この場合、どのように判断すべきなのでしょうか。
そこを解説します。
2号か7号かは、金額の記載有無で判断する。

まず、最初に結論からお話します。
請負契約である2号文書と継続的な取り引きの基本となる契約である7号文書。
契約書がこのどちらにも該当した場合、金額の記載があるのか、ないのかで、所属先を決定します。
契約金額の記載のあるものは、2号文書

契約金額の記載のないものは、7号文書

では、これらについて、より詳しく解説します。
2号文書(請負契約書)とは?
2号文書とは、印紙税法によると「請負に関する契約書」とされていますので、一般的な請負契約書が該当します。
民法では、当事者の一方(請負人)がある仕事の完成を約束し、その相手方(注文者)が仕事に対して報酬を支払うことを約束することによって成立する契約をいいます。
民法
(請負)
第632条 請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
民法
一般的なものでいうと、建設工事の請負契約や警備契約、機械保守、清掃などの契約が該当します。
2号文書とは、これらの契約で作成する次のような契約書が該当します。
- 工事請負契約書
- 軽微契約書
- 機械保守契約書
- 清掃業務請負契約書
- etc…
また、請負契約とよく似た契約に委任契約があります。
委任契約は、民法によると、当事者の一方(委託者)が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方が法律行為をすることを承諾することで成立する契約をいいます。
民法
(委任)
第643条 委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。
民法
一般的な契約書でいうと、業務委託契約書などが該当します。
請負契約と業務委託契約は、契約内容が似通っているため、どちらかを判断するのが難しいことがよくあります。
基本的に、請負契約は、仕事の完成を約束する契約ですので、仕事の完成に重きを置いている契約は請負契約と判断できます。
7号文書(継続的基本取引契約書)とは?
7号文書は、印紙税法によると「継続的取引の基本となる契約書」のことで、一般的な基本契約書や、業務委託契約書、売買取引契約書などが該当します。
ただし、契約期間が3か月以内であり、かつ、更新の定めのないものは7号文書に該当しません。
7号文書に該当するためには、原則として契約期間が3か月以上ある継続的な取引内容の契約である必要があります。
2号文書、7号文書の印紙税額
では、2号文書、7号文書に該当した場合の印紙税額はいくらなのでしょうか。
2号文書の場合 | |
記載された契約金額 | 税額 |
1万円未満のもの | 非課税 |
1万円以上 100万円以下のもの | 200円 |
100万円を超え 200万円以下のもの | 400円 |
200万円を超え 300万円以下のもの | 1,000円 |
300万円を超え 500万円以下のもの | 2,000円 |
500万円を超え 1,000万円以下のもの | 1万円 |
1,000万円を超え 5,000万円以下のもの | 2万円 |
5,000万円を超え 1億円以下のもの | 6万円 |
1億円を超え 5億円以下のもの | 10万円 |
5億円を超え 10億円以下のもの | 20万円 |
10億円を超え 50億円以下のもの | 40万円 |
50億円を超えるもの | 60万円 |
契約金額の記載のないもの | 200円 |
7号文書の場合 | |
継続的取引の基本となる契約書 | 4,000円 |
たとえば、契約金額が100万円以下の請負契約書は、印紙税額が200円なのですが、もしこれが基本取引契約書として7号文書に該当する場合、4,000円の印紙税額になってします。
これだけの金額差がありますから、2号文書、7号文書、どちらに該当するかは重要な問題です。
記載金額があれば2号文書、記載金額がなければ7号文書

印紙税は、課税文書に対して、課税されるものですので、その文書が何号の文書に該当するのかは、とても重要な問題です。
課税文書が「何号の文書」に該当するかの判断を「文書の所属の決定」といいます。
国税庁では、文書の所属の決定についての判断基準を示しており、原則としてそれに従う必要があります。
2号文書と7号文書が併記又は混合記載されている文書の判断基準は、次のとおりです。
契約金額の記載のあるものは、2号文書

契約金額の記載のないものは、7号文書

契約金額の記載とは
契約書内において記載する金額にも様々な記載方法があります。
特に継続的な取引契約の場合、契約金額ではなく、単価や数量の料金だけを定める場合もあります。
たとえば
「保守料金は、1枚につき10円とする」
というような基本契約の場合、これのみでは、契約期間の実際の合計金額は、分かりません。
契約期間の実際の合計金額が計算できないような、単価のみや数量料金のみの記載の場合は、契約金額の記載があるとは判断されません。
ですので、この場合は、契約金額の記載がないものとして7号文書に該当します。
ただし、単価の記載であっても、月数や日数、契約期間が定められ、合計金額が計算できる場合があります。
たとえば
「保守料金は、月額3万円とする。」
「本契約は、1年間とする。」
となっている場合、契約金額は月額3万円×1年間=36万円と計算できます。
この場合は、合計金額が計算できますので、契約金額が記載ある文書として2号文書が該当します。
最終判断は税務署に
2号文書と7号文書の判断では、契約金額の記載があるのかないのかが、判断基準となりました。
ですが、そもそも本当に2号文書に該当するのか、7号文書に該当するのかなど、課税文書の判断は、とても難しい解釈が伴ってきます。
もし、迷われるのであれば、税務署に相談に行き、判断基準を仰ぐのも一つの手段です。
印紙税額の問題を間違えてしまうと過怠金が徴収されますので、確実を期すためには、税務署に確認を取っておくのがベストです。
また、確認を取る際には、後々のために証拠が残るよう、文書に残しておくようにしましょう。
後日、担当者が代わって、解釈が変わってしまうなんてことがないように。
まとめ
2号文書と7号文書の印紙の違いについて解説してきました。
あなたの法務部では、あなたのビジネスを法的観点からサポートしています。
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